センチメンタルおばちゃん
12月16日のあさイチに「君の名は」のプロデューサー・川村元気さんが出演されていました。
映画の中の景色・風景に感銘を受けて現地を訪れてみるという聖地巡礼が話題にもなったこの映画。
川村さんがおっしゃるところによると、
都会に住む瀧が見た田舎の風景、田舎に住む三葉が見た東京の風景を描いているとのこと。
だから、どちらもキラキラと輝いているのだとか。
なるほどと思い、映画を見た時の気持ちを振り返ってみました。
私は飛騨地方出身で聖地となった古川駅や気多若宮神社はよく知っているのだが、映画で見た時はそれほどときめかなかった。
それはそれらが、今そこに存在してその姿を時々目にしているからなのだろう。
一方、架空の町である糸守町の風景が何故だか心に残り、映画を見た後、一緒に見たダンナにまず話したことが
「糸守は、今はもう誰も住んでいない故郷〇〇に似てる」
だった。
アスファルトが少しひび割れている小道、山の中腹にある学校から見下ろす町の眺め*1、山間ゆえ狭く見える夜空に煌めく星々、揺れる祭り提灯、みんな何処かで見たことがあるように思われた。
今はもう誰も住んでいない、失われた故郷がそこあった。
古川駅等とは違って、もうそこにはない故郷、自分の心の中にしかない故郷が映画の中にあったのだ。
だからこそ美しい。心の中の故郷は決して色褪せていないから。
思い出は美しすぎると誰かが歌っていたが、まったくその通りだと思った。
もう1か所、主人公の三葉が上京するとき、JR高山線の車窓からみた風景もまた私の中では特別だった。
高校を卒業し東京の学校へ進学したとき、三葉と同じように高山線に乗って上京した。
飛騨山並みの奥深く*2から都会へ向かう。
列車は山間部の谷間を飛騨川沿いに走る。
飛騨川が木曽川と合流、日本ラインと呼ばれた景勝地を過ぎると一気に視野が開け、行く手には濃尾平野が広がる。*3
家を出た時も、家族に見送られ列車に乗った時も泣かなかったのに、何故だか私はここで涙を流した。
そんな何十年も前の思いでとも相まって、三葉が上京する様子に心を揺さぶられたのだろう。
本編の中に、私の心の中が写しだされるから、現実よりもさらに美しくキラキラして見える。
私だけに限らず、映画を見た誰しもの心に寄り添うあの景色・風景が感動を呼ぶ理由の一つなのかもしれない。
「君の名は」で少しセンチメンタルになったおばちゃんのお話でした。